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課題解決型高度医療人材養成プログラム

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活動報告

2017年
  • シドニー大学見聞

シドニー大学見聞

「平成19年国民生活基礎調査」によると、頻度の高い自覚症状として腰痛、肩こり、手足の関節痛、頭痛が上位を独占しており、国民の多くが痛みを抱えて生活しているといえます。痛みは慢性化するに従い、罹患部位の器質的異常や身体機能だけの問題ではなくなり、精神医学的要因、心理学的要因、社会的な要因が関与して、痛みを増悪、遷延させることになります。そのため、痛み診療においては、診療科の枠組みを超えた対応が求められます。

その一方で、慢性の痛みに関して系統的に教育を受けるシステムが、現在の日本では整っていません。この状況を打開するべく、教育システムの構築を目的とした事業の一環で、2017年1月30日から2月3日の5日間、シドニー大学ロイヤルノースショア病院ペインマネジメントセンターにおける学際的な痛み治療を見学しました。当センターは慢性の痛みに関する教育、研究、臨床を担う機関であり、1994年からはADAPT( Active Day Patient Treatment )と呼ばれる集学的な痛み治療を行っており、臨床、研究、教育の面で多くの成果を上げています。

シドニー大学見聞 今回の見学メンバー(東京慈恵会医科大学、山口大学、滋賀医科大学、愛知医科大学、大阪大学より8名)と現地スタッフの方々

ADAPTは、1グループ6−7名の患者に対して120時間(3週間)かけて行われる集団的認知行動療法プログラムです。このプログラムで、患者は痛みや鎮痛に対するこだわりを自分らしく過ごすことを学び、それまで痛みによって支障を生じていた生活上の問題点を改善していきます。例えば、買い物に行く、散歩をする、など患者自身にとって現実的で具体的な活動に焦点を当て、心理療法と理学療法を組み合わせた介入が行われます。プログラム期間中に実践とフィードッバックを繰り返し、その後も患者自身が自分で痛みをマネジメントできるように導きます。この結果、プログラム修了者の70~80%に減薬・ 断薬、気分の改善、日常生活機能の向上、復職、などが認められ、さらに3~4年後でも60~70%が効果は持続すると言われています。

患者への指導は看護師、臨床心理士、理学療法士が中心となっており、医師は薬物調整など医学的判断を行うにとどまります。彼らは慢性の痛みに関して、その病態や基本的な治療、急性痛との違いなど基本的な知識を共有しており、それを元にそれぞれの専門性を活かした集学的治療を実現していました。また、診察や講義内容を動画記録し、インターネット上で閲覧できるように慢性の痛みに関する教育環境を整えていました。

慢性の痛みの治療において、日本ではまず、その知識の普及のために教育環境の整備が重要です。今回の見学施設でも実施していた、インターネットを使用したeラーニングなどの導入は地域や職種を超えた教育を行っていく上で非常に有用な手段となり得ます。今後の教育システムの構築に関して、参加したメンバーそれぞれがその必要性を再認識し、また実際の運営に関して示唆を得た有意義な見学となりました。

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